犬のしつけのごほうび、ドライフードを食べない場合は?

愛犬がドライフードを食べてくれない、
手からあげても見向きもしない、
トッピングをしないと食べてくれない…。
そんなお悩みを抱えている飼い主さんは少なくありません。先日伺ったレッスン先でも、まさにこの「フードを食べない問題」がありました。その中で、改めて大切だと感じたことがあります。1歳6か月のチワワ×トイプードルのミックス、ピノちゃん。ハーネスをつけようとすると威嚇して攻撃的になり、お散歩に行くのが難しいとのご相談でした。
ドライフードに興味のなかったピノちゃん
初回レッスンでお家に入ると、ピノちゃんは私に向かって猛烈な勢いで「ワンワン!」と吠えてきました。普段はあまり吠えないそうで飼い主さんも驚いていましたが、これは「知らない人が来た怖さ」からの吠えでした。そこでまずは、警戒心を解くところからスタートしました。
飼い主さんにしつけレッスン用の食べ物を用意してもらうと、「ドライフードは食べないので、ササミでお願いします」と。
ササミを少しずつあげると、ピノちゃんは落ち着き、だんだんと私に近づいてきました。警戒心が解けたところで、食べ物をドライフードに切り替えることにしました。トレーニングでは毎回使える食べ物のほうが扱いやすいからです。
飼い主さんは「いや〜、ドライは食べませんよ」と言いつつも、フードを用意してくれました。そして一粒軽く投げてみると、一度はパクッと口に入れたものの、「ん? ササミじゃない…」と、ポロッと落としました。
そこで、ここがポイントです。
私はすかさず、明るく楽しそうな声で
「え〜〜いいじゃん♪ 食べちゃいなよ〜♪ ほらほら〜♪」
と言いながらもう一度投げました。
すると、ピノちゃんはその”ノリ”につられてもう一度フードを口に入れ、カリッ、カリッ、と食べてくれました。
その瞬間、全力で褒めます。
「すごーい! えらい〜〜!!」
続けてもう一粒投げてみると、今度はすんなり食べてくれました。そこからはスムーズに食べ続けてくれました。飼い主さんは目を丸くして、「いままで手からあげても全然食べなかったのに…!」と何度も驚かれていました。
「食べない」の理由はフードだけじゃない
ここでお伝えしたいのは、「食べない」原因は食べ物そのものだけではない、ということです。もちろん、体調・年齢・味・粒の大きさ・学習歴など、「食べない理由」にはさまざまな要素があります。でも、見落とされがちな大切なポイントがあります。
それは「雰囲気」です。
食べるときに、
「なんで食べないの…」
「もう、早く食べてよ…」
というしょんぼりした空気があると、犬はますます食べなくなります。逆に、楽しい・嬉しい・明るい雰囲気は、食欲のスイッチを入れてくれます。
今回のように、
・一粒ずつ投げる
・食べたら思いっきり褒める
というだけで、食べることがゲーム感覚になり、ドライフードでも楽しく食べてくれるのです。つまり、「楽しいノリ」も立派なトッピングになるのです。また、「器から食べなくても大丈夫かな…」と心配される飼い主さんも多いですが、私はまずは手から食べられればOKだと考えています。
大事なのは“食べることに慣れる”こと。
楽しく食べられる経験が積み重なれば、そのうち自然と器からも食べられるようになります。

同じフードでも変わる。鍵は「雰囲気づくり」
飼い主さんが一番驚いていたのは、「楽しい雰囲気であげることで食べてくれる」という事実でした。同じドライフードなのに、与え方や雰囲気が違うだけで、反応がこんなにも変わるのかと。
初回レッスンが終わったとき、「小川さんのようにノリよくできるか分かりませんが、私たちもやってみます」とおっしゃってくださいました。
そして2回目のレッスンで、「手からなら問題なく食べてくれるようになりました!」と嬉しい報告をいただきました。
ちなみに、ハーネスをつけようとすると唸って噛んでくる問題も、装着までの段取りを変え、褒めながらつけることですんなり解決しました。こちらも「やり方を変える」ことで問題が解決しました。
今日から飼い主さんができる4つのこと
もし愛犬さんが、ドライフードを食べてくれないと悩んでいるなら、次の4つの事を試してみてください。
1.一口でも食べたら、明るく、ノリよく褒める
2.「なんで食べないの…」の空気感を出さない
3.手から食べられたら、それで十分OK
4.食べる=「楽しい、嬉しい、褒められる」をインプットする
「ノリ」が変われば、愛犬さんの食欲も変わるかもしれません。
ドッグベースキャンプ
トレーナー 小川亜紀子



