犬の多頭飼い、先住犬との相性の理想と現実とは?
今日は、「多頭飼い」を始めたばかりの飼い主さんからよく寄せられるご相談についてお話しします。最新では、1頭目の犬のしつけが落ち着いてきた時期に2頭目を迎える方からの依頼が増えています。
よくある多頭飼いの悩み
「先住犬も落ち着いてきたし、新しい子犬を迎えて一緒に遊ばせたい!」
「ふたりが仲良く寄り添って眠る姿を見られたら最高!」
そんなワクワクしたイメージを膨らませて、思い切って2頭目を迎える方が多いのですが、いざ多頭飼いの生活をスタートしてみると……
「思っていたより大変!」
「先住犬がなんだか迷惑そうにしている」
「子犬が元気いっぱいで手が回らない!」
と、現実とのギャップに戸惑うケースが多いのが実情です。
特に、先住犬がいる状態で子犬を迎えると、遊び相手ができたことで興奮しやすくなる傾向があります。 また、世話やしつけも2頭分になるので、当然ながら1頭だけを育てていたときより手がかかるのは避けられません。
まずは「子犬の興味を先住犬からそらす」こと
新しく迎えた子犬が元気いっぱいで、成犬の先住犬に何度も何度もじゃれついてしまう。その結果、先住犬が落ち着けなかったり、飼い主さんが目を離せず常に緊張した状態になってしまったり…。
「一緒にフリーにするにはまだ早いのでは?」
「でも、ずっと隔離しておくのもかわいそう…」
「2頭の関係はどう築いていけばいいの?」
そんな声をよく聞きます。
こうした状況で大切なのは、“子犬が先住犬に集中しすぎないようにする”こと。最初はどうしても、子犬は先住犬に対して、「遊んで!遊んで!」としつこくなりがちです。でも、それが毎回続くと、先住犬がストレスを感じてしまうことも。
そこでおすすめなのが、
・飼い主さん自身が積極的に子犬と遊ぶ
・食べ物入りのおもちゃ(コングなど)を活用して、一人遊びの時間を作る
といった工夫です。
飼い主さんがうまく子犬の関心を分散させてあげることで、先住犬との関係がギクシャクしにくくなります。
一緒に過ごす「落ち着いた時間」が大事
2頭をフリーにすると、どうしても大興奮したり、大暴れしてしまうことがあります。そんな時は、難しいトレーニングをする必要はありませんが、簡単なトレーニングを取り入れるのもおすすめです。
たとえば、「オスワリ」の指示で十分です。もし2頭が興奮し始めたら、2頭同時にお座りをさせてみましょう。お座りをすることで自然と一息入れることができ、お互いに気持ちを落ち着かせる効果があります。
「興奮し始めたら「オスワリ」」を繰り返すことで、2頭ともほどよいテンションで遊べるようになっていきます。
一緒に散歩できるようになると、一気に関係が進展!
そして嬉しいお知らせです。ワクチン接種が終わり、子犬がいよいよお散歩デビューできるようになると、2頭の関係がぐっと良好になることが多いです。
お散歩に出ると、子犬は外のさまざまな刺激に夢中になり、先住犬のことがあまり気にならなくなります。また、散歩でエネルギーをしっかり発散できるので、帰宅後も過度に興奮することが減ってきます。
その結果、子犬が先住犬にしつこく絡むことが少なくなり、先住犬も落ち着いた子犬を受け入れやすくなります。こうして、2頭の関係が自然とより良いものへと築かれていくのです。
「先住犬を優先すべ」は気にしすぎなくてOK!
多頭飼いに関する情報を調べると、「何でも先住犬を優先すべき」というアドバイスをよく見かけます。これは“パックリーダー理論”に基づく考え方で、「犬の序列を守ることで平和が保たれる」というものですが、実際には、「絶対にそうしなければいけない」ということはありません。
もちろん、先住犬の安心感を大切にすることは必要です。ですが、「トイレも、ごはんも、遊びも、なにがなんでも先住犬を先に!」とガチガチにルールを決める必要はありません。
・状況に応じて
・犬たちの個性に合わせて
・そして飼い主さん自身の都合に合わせて
柔軟に対応していくことが、結果として多頭飼いをスムーズに進めるコツだと思っています。
2頭の関係は「育てていくもの」
多頭飼いは、最初からうまくいくとは限りません。 でも、ポイントをおさえて時間をかければ良い関係が築けます。私も長年多頭飼いをしていますが、犬同士が一緒に過ごす姿は本当に微笑ましく、飼い主にとっても大きな喜びになります。
焦らず、比べず、一歩ずつ。
そして、2頭のどちらかに無理をさせないよう、飼い主さんが間に入ってうまくサポートしてあげてください。
ドッグベースキャンプ
トレーナー 小川亜紀子